イチ鉄道員視点の、彼らのお話。
これは、我らがボスの完結した物語である。
ノッテ タタカウ ポケモンバトル
観光スポットといえるライモンに名を連ねるイベントの一つ。
それが、俺が勤めるバトルサブウェイ。
まぁ今年入社したばっかの新人なんスけどね。
あ、カズマサならそっちの角曲がって行きましたよ。迷子?俺はしらねぇよ?
話がそれたな。まぁ新人として入った俺に待っているのは、一つずつこなしていく仕事と、十人十色の先輩、上司。
特にサブウェイマスターという肩書きを持った双子の兄弟は、先輩達が尊敬と親しみを込めてボスと呼ばれている。
「おはようございます、皆様、揃っておりますね?」
「おっはよーう!これから朝礼始めるよー!」
制服を黒一色に統一し、俺らが着ている鉄道員の制服とは全く違う裾の広いコートをはためかせ、口をへの字に敬語で喋るのがノボリボス。
逆に、白一色の制服を着て明るい笑顔と少し幼い言動が目立つのがクダリボス。
我らバトルサブウェイの頂点に立つ人たちだ。
朝礼では特筆事項の確認や一日の流れなどを、ノボリボスが流れるように読み上げていく。
俺はまだ必死にメモを取って把握するのに手一杯だけど、周りの先輩たちは流石というべきか、ほぼそのままで聞いている。
俺も早くあんな風になりたい。
つーか、カズマサあいつ朝礼ぶっちしてどこ行ってんだ?
早々にクビになってもしらねぇぞ・・・?
と、そんな事を考えていたら昨日からの引継ぎについても周知が終わったらしい。やっべ、メモ半分くらいしか取れてねぇ・・・。
今日も一日頑張りましょう、ノボリボスのその一言にみんなの気合の入った「はいっ」という声が響く。
今日は先輩にくっついて一日の流れと、バトルサブウェイでのアシスト作業を覚える事になっている。
今までに何度かそういう業務をやっているから、今日はミスしないぞ、と気合を入れているとボス達の姿が視界に入った。
――サブウェイマスター・ノボリ
――サブウェイマスター・クダリ
入社するまでは名ばかり聞いていて、最強とすら言われるほどのトレーナーでもあるという認識だったから、実際にお会いするまではどれだけ筋骨隆々なのかとびびっていたけれど、会ってみたらその想像は見事に砕け散った。
スマートですらりと伸びた長い手足と高い身長。黒と白の制服に身を包む彼ら。
それでも、期待は一向に膨らむばかりだった。
だって、ボス達って何があっても全部が全部完璧なんですもん。
お客様対応はスムーズかつ迅速にこなし、バトルの腕はめっぽう強く、俺ら鉄道員にすら気遣ってくれる優しさ。
俺らよりも休みは少ないし、拘束時間はとても長いのに文句一つもらさずにそれすら喜びと真顔で言えてしまう精神的、肉体的なタフさ。
こんな完璧な人が、世の中にいるんだと知ったときは本当に、本当に吃驚して。
でも最近ちょっと、見方が変わった。
彼らは完璧なんじゃない。
あの二人は、二人で一人分で、完璧なんだって。なんとなく、そう思ったんだ。